ESSAY

サッカーにおいて「闘う」ということ、とは?

サッカーにおいて「闘(たたか)う」ことが必要であることはよく言われているが、「闘う」という言葉は少し抽象的(ちゅうしょうてき)である。

そこでここでは、「サッカーにおいて『闘う』とは、どのような行為・行動であるのか」をできるだけ具体的(ぐたいてき)に言語化(げんごか)して、わかりやすく解説(かいせつ)してみようと思う。

一般的に競技サッカーにおいて「闘う」という言葉が表しているのは、「闘うという精神状態だからこそできる行為」のことであり、それはつまり「状況に応じた最小単位のプレーを、強度を落とさず正確にやり切る行為」のことであり、その行為は具体的には、「球際(たまぎわ)での踏ん張り<デュエル>」「予測(よそく)と攻守(こうしゅ)の切り替え<トランジション>」「ハードワーク」の3つの項目に分類できるのではないかと考えた。

以下でその3つの行動をより具体的に言語化してみようと思う。

1. 球際・局面での肉弾戦(デュエル)

  • コンタクトを恐れない: 相手との競り合いで腕や腰を使ってスペースを確保し、できる限(かぎ)り体の芯(しん)をブラさずに相手に体をぶつけて、相手より自分がボールに近い状態を作り出すこと。
  • ボールを恐れない: 早い速度で自分に向かってくるボールにも恐れず、相手のシュートやパスは体を投げ出してでもブロックし、ルーズなボールは自分たちの有利になるように的確(てきかく)に処理(しょり)をすること。
  • (足先を出さずに)体をぶつける: 相手とボールの間に最短距離で自分の体をねじ込み、相手とボールの間に壁(かべ)を作ること。
  • (マイボールの時の)泥臭(どろくさい)い処理(しょり): ボールを保持している際には綺麗なパスやトラップができなくても、瞬時(しゅんじ)に相手とボールの間に自分の体をねじ込んで、相手より自分がボールに近い状態を作り出すこと。
  • (相手ボールの時の)泥臭い処理:自分の体を投げ出してでも相手のボールを掻(か)き出したり、自分の体を強く相手にぶつけて、相手の体ごとボールを危険の少ないエリアに押し出すこと。

2. 0秒の切り替え(トランジション)

  • ミス後の即時奪還(そくじだっかん): パスがずれたり奪われたりした瞬間、立ち止まらずに最短で相手にプレスをかけ直すこと。
  • 攻守の高速シフト: 攻撃から守備、守備から攻撃のフェーズが変わった瞬間、誰よりも早くトップスピードで走り出す(アクションする)こと。

3. サボらないハードワーク

  • 終わりのないカバーリング: 味方が抜かれたりピンチの場面で、自分のポジションを捨ててでも全速力で助け(カバー)に戻ること。
  • 地味なサポートの継続: ボールに関与していない時でも、パスコースを作るため、あるいは相手をマークするため、常に細かく立ち位置を修正し続けること。

上記のように「闘う」という言葉に表されるひとつひとつの行動をみてみると、「闘う」というのは、スーパープレイをすることではなく、上記のような「恐怖(きょうふ)を感じる」「痛みを伴う」「疲労(ひろう)が蓄積(ちくせき)する」プレーをどれだけ試合終了まで連続できるかを指す場合が多く、少なくとも「ボールを奪(うば)う際に相手に思い切り近づけるか」「接触(せっしょく)を怖がらないか」は一つの指標(しひょう)と考えられる。

その上で、上記のような「闘う」ことができた場合と、そうでない場合で何が変わってくるのかを考えてみると、その結果はシンプルで、技術が低くても一生懸命戦えるチームは負けにくくなるし、逆に技術があっても戦えないチームは勝てないことが多くなるということである。

競技サッカーにおいて強いチームになるためには、上記のような「闘う」ことが前提であり、それがあった上でようやく、技術や戦術という話をすることができるものなのだ。

だから、競技サッカーにおいてはチームで一番技術が優れていると誰もが認める選手でも「闘えない」のであれば、レギュラーになれないこともある。

体を投げ出せるか、相手を受け止められるか、あるいはぶつかる前に駆け引きで勝てるか。そういった「ボールの奪い合い」で負ける選手は、どれだけ上手くても大切な試合では使うことはできない。

「闘えない選手」が一人でもいると、そこが穴となりチーム全体が負けるリスクになる。そのため、監督が「怖い、無理だ」と逃げる選手をピッチには立たせることはできないと判断するのは当然ということである。

競技サッカーにおいては、技術以前の前提条件として「闘えること」が求められるのだ。

競技サッカーにおいては、特に守備では激しく戦い、攻撃では、闘う強い気持ちをしっかりと持ちながら、状況に応じて冷静に技術を発揮する。そのバランスが取れているチームこそが優秀ということになるのかもしれない。

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